デザインについて、クライアントに対する私なりの戦い方
定期的に思うことなんですが、私が仕事をしていて思う、ジレンマや鬱憤やストレスのもっていき方について、書いてみようと思います。文章にすることで自分の中でもっと整理して、成長できたらいいなーという気持ちも込めて。
さきに追記
時間が経ってこの記事を自分で読み返すたび、ものすごい恥ずかしくて消してしまいたい衝動にも駆られるのですが、若かった駆け出しの頃の自分の記録だと思って、戒めのために残しておくことに…します…!(´A`)
新人さんとか、これからの方の、お役に立てたら…良いのです…が_(:3 」∠)_
きっかけ
この記事を読んで、ちょっと考えさせられました。
板挟みにあった経験
私が今の仕事に就くちょっと前、とあるプロジェクトで外注さんを巻き込むことになり、そのプロジェクトのトップの部長から「専門的なことはわからんから打ち合わせの時は同席してくれ」と言われたことがありました。
デザイナーさんvsデザインセンスのアレな上司
私としては、プロのお仕事は非常に勉強になり、「さすがだなぁ」と感動しきりでした。デザイン案を見せてもらいながら、「漢字と送り仮名のフォントサイズが微妙に違うんだな、これが文字組というやつか」「色合いもベースがコレで差し色がコレなんだな」とかうきうきしていたら、上司の攻撃。
「なんか全体的にちっちゃくまとまりすぎてない?」「もっと文字大きくしてさ、色も沢山使ってさ」「この○○を一番上に持ってきたらどう?」などなど、完全に上司のターン。デザインなど勉強したこともないどころか、IE6でヘッダーに警告が出てるのをまるっと無視して「デザインがおかしい」などと平気で言う上司のターン。
私は気持ちは完全に外注さん側だが、こちら側の人間。しかも相手は上司でプロジェクトの責任者。なんも言えねぇ…。
デザイナーさん、切れる
最初は「でもそれは…」「そこはですね…」と言っていたデザイナーさんだが、高圧的な態度の上司についに、「△△に基づいて、○○効果を狙って××になってんですよ!!!」と。
上司はそこで黙り(面白くなさそうな顔はしていたが)、向こう側のディレクターさんが慌ててフォローして(というか若干デザイナーさんを叱り口調で)、「全てを直すのは今からだと難しいですが、今のご意見を一部取り入れさせて頂いて、このような形はいかがでしょう?次回、デザイン案を数点お持ちしますね」と収めてくださった。
デザイナーさんの気持ちは痛いほど分かる。きちっとデザイン論と案件に沿ったモノを素人からケチをつけられ改悪しろと強要されたんだから、辛かっただろう。でも、でもやはり、感情的になって声を荒げるのは良くなかったんじゃないだろうか。
ちなみに、次回の打ち合わせにはデザイナーさんは来ず、ディレクターさんだけだった。ただ日程が合わなかっただけかもしれないけど、もう来たくなかったのかなぁなんて思ってしまった。
自分自身の経験
私は社内の人間としてやっているので、クライアントと言っても同じ会社の人間です。でも、だからこそ、気軽にとんでもないこと言われたりするんですよね。最終決定権が高年齢層の案件ほど、特に。
良くあるのが、第一案は「いいね」なんて言われていたのに、何故か最終調整の段階になってそれが根本から覆る。最初は落ち着いた感じでとか言っておきながら、文字が大きくて、色が多くて、ガチャガチャしてるのが良いなどという感じで、いわゆる“ダサい”要求(わたしの観点では)が積み上がる。
なんで私はこんなダサいものを作らなきゃいけないんだろう。これをお客さんに「コレはあの子が作ったんですよ」なんて言われたら耐えられない。もう、何が“良いモノ”なのか分からなくなってきます。私は、日々勉強しているつもりで、ただ単に「オシャレに見えるモノ」にかぶれているだけなんじゃないか。本当は彼らの言っているモノが“良いモノ”なんじゃないか。
でも、クライアントの要求には答えるべき
最初こそかなり反発する気持ちもありましたが、それでも、やはりクライアントの意見が優先なんだと思います。
だってお金をもらうんだから
なんでもYesと言って自分の案を全否定すべき、というわけではありませんが、ただ、感情に任せて喧嘩をするのだけは避けたいな、と思うのです。びっくりするようなことを言われても、まずは“お金を貰っている立場としての”自分の意見を相手に分かるような言葉できちんと説明し、こういった理由で、私はこちらの方が良いと思いますよと提案し、それでもダメなら、妥協案を何点か作って落としどころを探らねばなりません。
自分の意見は、冷静に、論理的に
提案順としては、8:2 → 6:4 → 4:6 …みたいな割合で、ちょっとずつ相手の意見を組み込んだ妥協案を何点か提示するのが良いのか、なぁ。
また、相手は論理的でもなんでもなく、自分の(デザインの勉強などはもちろんしたことがない)感性だけで要求してくることが多いので、それに対する懸案事項なんかをオブラートに包みながらそっと伝えておいたほうが良いかもです。
その色はこんな特徴があって、一般的にはこんな印象を与えると言われていますよ。このデザインなら、こちらの色のほうが要望に適した効果が予想されますよ、とかなんとか。
「全部言われた通りにしてやるよ!それで不利益が出たって知るもんか!」っていうのは(そんな気持ちになってしまうのも、経験済みですが)、やりたくないですよね。
※こちらについては、閲覧者様より非常に建設的なアドバイスを頂き、そのことを文末に追記させて頂きました。
理想は、笑顔で
もちろん、ストレスは溜まります。特にこういった仕事の場合、必死に積み上げてきた、ささやかな自分のプライドがズタボロになりますよね。でもそれは、仕事以外で発散するなり愚痴るなりして、少なくとも表面上は平静を保っていたいものです。
“最先端のモノ”は日々追いかけて、勉強していかねばなりません。でもそれがそのときの仕事に活きるかは別問題と割り切って、“その案件に一番良いと思われるモノ”をクライアントとすり合わせて、自分の中で(納得はできなくても)妥協してやっていかねばならないのだと思います。
今後の私の目標は、その妥協を、「顔に出さずに」行うということですね。どんなに腹の中で気持ちが渦巻いても、にっこり笑って対応していきたいものです。だってお金、もらってますからね!
追記:一番大切なのは
コメント欄で、非常に大切なことをご指摘頂きました。
今回の記事は、私がここ最近横暴な目に逢いモヤモヤしてたのを吐き出すような気持ちで、打倒クライアント!みたいな感じで書いてしまいましたが、一番大事なのはそれを受け取ったエンドユーザーがどう感じるかですよね。
エンドユーザーは、私たち制作側のいざこざなんかぜんっぜん関係ないわけです。そして、エンドユーザーに想いを届けるのはクライアントです。私たちは、それを一番良い形で橋渡しするのが仕事です。
クライアントの想いを、一番適していると思われる形に成形して、エンドユーザーに渡す。言ってみたら、私たちの提案なんか関係ないのかもしれません。少し、思い上がっていたのかな。
なんだか、もっと謙虚でなくてはという気持ちになれました。ありがとうございました!
追記2:要求にそのまま答えるんじゃなくて
有難いことに多くの方に読んで頂いているようで、様々なお気持ちをお聞かせ頂いています。そのなかに、こんなご意見がありました。
クライアントとデザイナーの平行線。「パートナー」として「ものづくり」をするなら、なぜ客がその要求をしてくるのか考えて欲しい。客の言いなりでもなく。最終的にその先にいるユーザーへ満足を届ける最善解決を。 / “デザインについて、クライア…” http://t.co/dnR83cFA
— Atsushi BIRD Tomita (@bird_tomita) August 2, 2012
反発 → 諦め・妥協(タイトルも“戦う”にしてしまいましたし)のような心境になっていた私にとって、非常に胸を打たれるアドバイスでした。妥協してそのまま聞き入れるのではなく、その要求をする“理由”を明確にし、それに見合った提案をするべきですよね。
実際問題、相手側も手ごわいので、実行するにはかなりの知識や説得力のスキルが必要であると思います。でも、気持ちだけでも、上を向けた気がしました。快くツイート掲載の許可を頂きまして、本当にありがとうございました!
検索などで辿り着いた方へ贈る参考記事
なんともお恥ずかしい内容の記事でしたが、検索などから読んでいただけることもあるみたいなので、同じような気持ちを抱く新人デザイナーさんに参考になりそうな記事を見つけ次第追加していきますー。
2012/9/27追記
本命にも「名前」をつけます。低コストに抑える「キモ」がこのネーミングです。仮に本命を「コミュニケーション」と名付ければ、「コミュニケーション」「トリコロール」「シンプル」から選択させます。すると実際には「色」で選択しているのに、ネーミングから膨らむイマジネーションが「選考理由」だと錯覚するのです。
この部分は凄すぎて唸ってしまいました。説得するスキルのひとつとして、覚えておきたいですね!
2013/4/4追記
ボタンを赤くして欲しいのではなくて、目立たないから強調して欲しいだけだったり、背景が派手なのを少し抑えたいからグレーにしてくれといっているだけだったりします。要は赤でなくてもいいしグレーでなくてもいいのです。違和感を伝えるために自分たちなりに考えて言っているだけなので、それがよい結果を招くものとも限りません。
ああ、年配の方のご意見は、ほぼこれだったのかと…!もっと早く気づかなければいけなかった…orz
2014/3/12追記
クライアントの曖昧な指示、曖昧なイメージをどこまで的確に汲み取ることができるか。それを具体的にお互い確認した上で、デザインに入ることができれば後のストレスが全然違いますよね。デザインも段取り八分なんだなー。
6件のコメント
デザイナーである以上、クライアントの思いを限りなく実現するデレクションが必要に思えます。
そもそも一番はエンドユーザーがどう感じて商品にアプローチしてくれるか、対価を払って商品とユーザーを結ぶ為デザイナーをチョイスしているのだから、クライアントは気に入るまでとことん意見を言うべき。
中途半端な対応は、本当によい自社の商品を伝えたいとのかどうか、いい広告等をつくりたいのか等の思いがたりないのでは…と思ってしまいますね。
もの作りの過程で、いいものをつくる為のダメ出しに凹んでなんかいられない。いいものを作りたいから
saiGOGO!さん、コメントありがとうございます。
平行線→妥協みたいな部分にばかり言及してしまって、一番大事なことを忘れかけていました。大変お恥ずかしいです。
>一番はエンドユーザーがどう感じて商品にアプローチしてくれるか
まさにこの通りだと思います。当たり前のことなのに、なんだかガツンと感じました。気づかせて頂いて、ありがとうございました!
こんにちは。
最近、デザイナーさんと、
お客様から頂いた漠然としたイメージを煮詰め、デザイナーさんにお伝えし作成していただくも、お客様に「イメージと違ったから、やっぱりこうして」
と言われては、やりなおしという状態に陥いっています。
何度もやり直しの作業に
デザイナーさんが頭に来ている事もわかった上で、
デザイナーさんに気持ち良く仕事をしてもらうにはどうしたらいいだろう?と、
何かヒントでもあればと思い、web検索し、ご訪問させていただきました。
すべてがわかったとは言えませんが、
デザイナーさんの気落ちが少しでも知る事ができ、助かりました!
こんにちは、コメントありがとうございます。
この記事は私がこの仕事をするようになった駆け出しの頃に書いたものでして、今読み返すと非常に、青いというか恥ずかしい気持ちで身悶えてしまうのですが、初心に戻りたい時などの戒めのために残してあります。
当時憤った感情で書いてしまったので言葉選びは幼稚ですが、デザイナーとクライアントのすり合わせというのは本当に永遠のテーマなんじゃないかな、と今でも思っており、間に立つ方の気苦労も大変なものとお察し致します。
当時の私の文章が多少なりともお役に立てたならばとても嬉しいです。ストレスの多いお仕事ですが、がんばってください!
こんにちは。
お返事ありがとうございます。
*youさんも、お仕事大変だと思いますが、頑張ってください!
わー!わざわざありがとうございます!
がんばりますー!(*´∀`*)
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